Photo diary from sajima

写真家 内田亜里のブログです

インド映画 「JAGTE RAHO」

大雨、そして昨日から暗室に電気がきません。

外は川のようになっていますが、植物たちはうれしそう。

家をかりているおじさんが色々映画をかしてくれるので、インド映画をよく見ます。

「JAGTE RAHO」1956年作
出演はインド映画の名優、ラージカプール


一晩かぎりの集合住宅でおきた泥棒騒ぎの話です。
この映画でラージカプールは、名前のない貧しい田舎のファーマーという設定で登場します。

夜、だれもいない公道で、警察が

「JAGTE RAHO」(目を覚まして)

と呼びかけます。日本でいう火の用心みたいなかけ声なのかな。
ラージカプールは、ただ水がのみたいという欲望だけで、ある集合住宅にはいってしまい
警察に泥棒に間違われ、ひたすらにげていきます。

しかし彼は、とても正直で優しい心の持ち主。最後の最後まで台詞はほとんどなく
なにかを「怖れている」というアクションだけで映画は進みます。

この集合住宅で様々な家にかくれている中で、多くの人間の悪い欲望にみちた世界をかいま見てしまいます。
偽札作り、酒の密造、妻のバングルを盗む夫、女を道具のようにしかあつかえない男、貧しい人を泥棒のように扱う金持ちの人。

ラージカプールは、そのような住人の悪行に心をいためます。
しかし、彼は常になにかを「怖れている」ため、住人たちは彼を泥棒だと決めつけていきます。

最後の最後に追いつめられたとき、はじめて彼は力強い言葉を言うのです。

しかしだれも彼を信じることができません。
そしてあるこどもの部屋に逃げ入ったとき、天使のような子供にさとされます。

「あなたは何を怖れているのか」

長い夜の騒動の闇をすべて明るみにだすように、だんだんと世界が朝日に包まれていき、ラージカプールの心に何かを怖れる
という暗い部分がなくなっていき、思考が目覚め始めます。
体と意識が目覚めたとき、何が悪くて何が良いことなのか、すべてがクリアーになっていきます。


この映画でのラージカプールの演技はすばらしかったです。
台詞がないうえ、どこかコミカルで慈悲深い主人公の特徴をよくあらわしていると思います。
終わり方は、実にインド的で清々しい。途中に歌われる歌なども、歌詞ともども美しいです。

おすすめ。