Photo diary from sajima

写真家 内田亜里のブログです

「密林の語り部」

アマゾン風に輪になって、
胡座をかき、
背筋をまっすぐに伸ばし、東洋人のように、座り、
夜へと移りはじめ、
明かりを失いかけた夕暮れの光を浴びている男女の一団は、
催眠術にかかったように精神を集中していることが一目でわかった。
彼らはぴくりとも動かなかった。
すべての顔は、円の半径が円の中心に向かうように、
マチゲンガ族の男女の輪の中心に立って腕を動かしながら話している影になっている男に、磁石で引き寄せられるように向けられていた。
背筋に戦慄が走った。
《マルファッティは、どうやって彼らの許しを得たのだろうか?どうやって?》
と思った。
私はかがんで、写真に顔を近づけた。
眺めたり、匂いを嗅いだり、想像力と目で穴の開くほど見つめた。
そのとき、画廊の女性が小机から立ち上がっていぶかしげにやってくるのにきづいた。
平静さを保とうとつとめながら、写真は売っているのですかと訊いた。
いいえ、売り物ではありません。これを本にするそうです。私は写真家に連絡を取ってくれるように頼んだ。残念ですけどそれはできませんわ。
「ガブリエレ・マルファッティさんは亡くなられました」
(略)
私は彼女に礼を言った。
そこを出て、フィレンツェの旅行者の感嘆の声や群れに今一度ぶつかる前に、写真に最後の一瞥を投げかけることができた。
そう。
間違いなく、それは語り部だった。

「密林の語り部」
バルカス=リョサ